インターネット概論
課題・冒険話。
_____________________________
ある朝だったか
ある夜だったか
それは眠ってしまって、はっと目が覚めた時。
今がいつの今なのかわからなくなっている時。
波の音と潮の匂いでここが海であることがわかった。
空はネズミ色と朱色が混ざったような。
いや、大量の生命が混ざったような何とも言えないイロ。
とにかく、全てを包み込むように光っている。
(弦が交わった)
音であるか光であるか。
曖昧な何かが響いた。
「交わってしまったようだな。」
今度ははっきり聞こえた。人間の声だ。
「おい。聞いてるのか?」
はっと振り向くとクボタツが立っていた。
「交わってしまったんだよ。また戻るまでに時間がかかる。」
クボタツ?
「理解するな。理解など最も無意味だからね。」
クボタツはそう言うと、
回れ右をしてゆっくりと歩いて行った。
私はあわてて立ち上がり、追いかけた。
「コギト・エルゴ・スム。
もうそんなことさえ無意味に近いよ。」
誰に言うでもなく、彼はつぶやいた。
気付くと、さっきまであった海は消えていた。
そのかわり、たくさんの植物がゆらりとゆれている。
空は相変わらず、形容しがたい光を放っている。
歩いているか止まっているかもわからない。
地についているのか、浮いているのかもわからない。
夢よりも夢だ。なんなんだ。ココは。
落ち着かない私にクボタツが口を開いた。
「簡単に言えば、君は今まで道なりの時間軸を進んできた。
紙の上に書いたような1本線の上を。つまり2次元を。
いまや画面上でも紙上でも容易く3次元が創造できる。
疑似空間では在るが、その世界では紛れもない真実となる。
2次元が3次元となる錯覚なんて、どこにでもある。
君たち人間は、疑似空間を弄りすぎたようだ。」
子供に絵本を読み聞かせるように言った。
「親宇宙のサイズは十のマイナス三十三乗cmといわれている。
つまり十の三十三乗分の一cmだ。ミクロもいいところだ。
君達の世界はそこから生まれた、子宇宙、孫宇宙、曾孫宇宙。
もっともっと、先の宇宙のひとつでしかない。」
「結局つめこみすぎたんだ。」
ひと呼吸おいてから、そう言った。
「小さなビックバンのようなことが起こった。
君たちの宇宙は一気に性質を変えたんだよ。
水が蒸発して水蒸気になるように。」
クボタツが言っていることの10%もわからないが。
ココは紛れもなく今であるらしい。
(弦が交わった)というのは調弦理論の話しだろうか。
「形式にこだわるな。」
水蒸気がまた水に戻るまで
ゆっくりとココにいるとしよう。
つづく